徹底した役作りで知られる山崎努だが、撮影現場における数々のエピソードも語り草となっている。黒澤明との初タッグとなった『赤ひげ』や『天国と地獄』では、巨匠からの妥協のない要求に応えるため、寝食を忘れて役に没頭したという。画面上で漂うあの異常なまでのリアリティは、極限状態での妥協なき演技格闘から生み出されたものだ。
また、伊丹十三監督とは互いの美学をぶつけ合いながら、カット一つひとつのニュアンスを徹底的に磨き上げた。自身が納得いくまで役のバックボーンを掘り下げ、台本に書かれていない男の過去まで脳内で構築してからカメラの前に立つというアプローチは、共演した若い俳優たちにとっても生きた教材であり続けた。