屋号「成田屋」の代々が守り抜き、洗練させてきたのが「歌舞伎十八番」と呼ばれる市川家のお家芸だ。なかでも「勧進帳」と「助六由縁江戸桜」は、その最高峰として世界中で知られている。
「勧進帳」における武蔵坊弁慶の豪胆さと主君への忠義、そして幕切れの「飛び六方」で見せる圧倒的な身体表現は、見る者の心を揺さぶらずにはおかない。一方、「助六由縁江戸桜」では、江戸っ子の粋と美意識が凝縮された華やかな舞台が繰り広げられる。
力強い「荒事(あらごと)」の誇張表現の中に、人間味あふれる繊細な感情の発露を織り込む。これぞ成田屋が数百年にわたり積み重ねてきた美学であり、十三代目市川團十郎白猿がその身をもって体現し続ける伝統の神髄である。