明石焼きを語る上で避けて通れない聖地が、明石駅の南側に広がる魚の棚商店街(うおのたな)です。全長約350メートルのアーケード街には鮮魚店とともに無数の専門店が軒を連ね、創業数十年を数える「本家きむらや」「よし川」「たこ磯」といったレジェンド店舗の前には、平日でも観光客と地元住民が入り乱れて長蛇の列を作ります。現地取材で聞こえてくる常連客のリアルな声は極めて明快です。
「観光客は出汁だけに浸して食べるけれど、地元の人間は板の上の玉子焼にまず卓上の特製ソースをハケで薄く塗り、それをそのまま冷たい出汁にドボンとくぐらせる。ソースの酸味と昆布出汁の旨味が合わさって、何個でも胃袋に吸い込まれていくんや」
この「ソース+出汁」のハイブリッドな食べ方こそ、地元民が日常的に実践する裏のスタンダードです。一方、大手メディアの明石焼き人気ランキング上位に名を連ねる店舗と、全国各地で味わえる明石焼きおすすめ名店を照らし合わせると、現代の消費者に支持される店には共通する特徴があります。
ネット上の口コミを分析した明石焼きネットの反応では、「東京でも本場の味が食べられるとは思わなかった」「注文を受けてから1枚ずつ銅板で焼き上げる姿勢に職人魂を感じる」といった好意的な意見が8割を超える一方、「作り置きでしぼんだ玉子焼を出されて幻滅した」という手厳しい指摘も散見されます。名店たる絶対条件は、どれほど混雑していようとも「完全受注生産」を貫き、焼き台から客席への最短距離を妥協しないオペレーションにあります。