「いらしてください」は目上に失礼?誤用疑惑の真相と正しい言い換え術

「いらしてください」は目上に失礼?誤用疑惑の真相と正しい言い換え術

「いらしてください」は目上に失礼?誤用疑惑の真相と正しい言い換え術の基礎知識と応用に迫る! わかりやすい言葉でご紹介しています。

言葉の成り立ちを精査すると、「いらしてください」は決して文法的な間違いではありません。この表現は、行く・来る・居るの尊敬語である「いらっしゃる」の連用形「いらして(いらっしゃっての音変化)」に、相手に要望を伝える補助動詞「くださる」の命令形「ください」が結合した構造を持っています。

文化庁が策定した『敬語の指針』に照らし合わせても、相手の動作を高める「尊敬語(いらっしゃる)」と、相手からの恩恵を促す「敬語補助動詞(ください)」の接続であり、同一の語を重ねてしまう「二重敬語」の誤用ルールには抵触しません。英語で表すならば「please come (and visit us)」に相当し、辞書的にも「来てください」「いてください」「行ってください」という3つの文脈をカバーする多面的な敬語表現です。

それにもかかわらず、なぜ現場では「誤用ではないか」と疑われるのでしょうか。最大の要因は、「いらして」という語形が「いらっしゃって」を口頭で滑らかに発音するために崩した「略語」の性質を帯びている点にあります。文法的には正当であっても、略された響きがフォーマルさを損なわせ、受け手に対してぞんざいな印象を与える引き金となっています。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。