「鬼ころし」を語る上で外せないもう一つのトピックが、将棋における有名な奇襲戦法「鬼殺し(おにころし)」です。
この戦法は大正時代末期、大道詰将棋の出題者や棋士の間で考案されたハメ手の一種で、「鬼も逃げ出すほどの破壊力」「相手が正しく受けなければ瞬時に相手陣を崩壊させる」ことからその名が付けられました。先手が初手▲7六歩から素早く桂馬を跳ね出し、強引に角頭を突破して飛車・角・桂の協力で一気に敵陣を蹂躙する攻撃的スタイルが特徴です。
しかし、現代のAI研究や定跡整備が進んだ環境において、鬼殺しは「正しく受け止めれば受ける側が圧倒的有利になる無理攻め」であることが完全に証明されています。後手側が初手の意図を見破り、冷静に「△6二銀」と引いて自陣を引き締めたり、「△5四歩」から中央を手厚く受けることで、先手は桂損となり一気に作戦負けに陥ります。
お酒の鬼ころしと同様に、将棋の鬼殺しもまた「初見のインパクトは絶大だが、冷静に対処・理解すれば恐れるに足らない」という共通の教訓を持っています。