日本の法体系において、実の親子関係を将来にわたって解消する手続きは存在しない。民法第4編「親族法」が定める血族関係は、死亡あるいは特別養子縁組といった極限の例外を除き、当事者の意志によって消滅させることができない仕組みになっているからだ。たとえ何年間音信不通であっても、法律上の親子であり続ける事実に変わりはない。
ここでしばしば問題となるのが、民法第877条第1項に規定された「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という条文だ。親の老後資金が底を突き、要介護状態や生活保護受給に至った際、福祉事務所から子供に対して扶養照会が行われるケースが後を絶たない。日本弁護士連合会などでもこの扶養照会の運用を巡る不利益や精神的負担が議論されているが、現行制度上、家庭裁判所に申立てを行っても「親子関係を白紙に戻す審判」が下されることはあり得ないのが冷徹な現実である。