海鮮のイメージが先行する街で、市民が日常的に愛してやまないのが鶏肉料理だ。その中心に君臨するのが、昭和27年創業の「若鶏時代 なると」。昼時ともなれば、地元住民から観光客までがひっきりなしに暖簾をくぐり、店内は独特の熱気に包まれる。
テーブルに運ばれてくる名物「若鶏半身揚げ」の迫力は圧巻だ。皮はパリッと黄金色に揚がり、湯気とともに立ち上る塩とコショウのシンプルな香りが食欲を激しく刺激する。躊躇せずに手で引き裂くと、ジューシーな肉汁が溢れ出す。余計な衣をつけず、高温の油で一気に揚げ切る伝統の技が、肉の旨味を極限まで閉じ込めている。
座敷で家族連れが半身揚げにかぶりつき、カウンターでは常連客が定食を黙々と味わう。港町が育んだこの飾り気のないソウルフードは、小樽のもう一つの確固たる食の柱だ。