術中に生命危機へ直結する二大要因が、局所麻酔中毒とアナフィラキシーショックだ。特に広範囲への麻酔浸潤を伴う手術では、リドカインなどの麻酔薬が規定量を超えて血中に急激に流入する、あるいは誤って血管内に注入されることで局所麻酔中毒が引き起こされる。
初期症状である口周囲のしびれやめまい、耳鳴りを見逃すと、瞬く間に全身痙攣や重篤な心室性不整脈、そして心停止へと移行する。さらに、抗生剤や麻酔成分へのアレルギーによるアナフィラキシーショックが重なれば、気道浮腫による窒息や急激な血圧低下が起きる。救急蘇生用の脂肪乳剤投与や気道確保の機材、アドレナリン投与の備えが手術室に即座に揃っていなければ、不可逆的な脳障害や死を防ぐことはできない。