馬肉料理の歴史を紐解くと、東京の下町エリア(吉原遊郭周辺や千住、浅草など)において、スタミナ食・滋養強壮食として発展してきた背景が見えてきます。かつて吉原に通う通人たちが、精をつけるためにこぞって食したのが「蹴飛ばし鍋(桜鍋)」でした。
明治維新以降、文明開化とともに牛鍋が爆発的流行を見せる一方で、庶民の活力源として愛され続けたのが馬肉専門料理店です。四代目福屋は、そうした歴史の荒波を越え、代々の店主が目利きと包丁技術を研ぎ澄ませてきました。初代から受け継がれた秘伝の八丁味噌ベースの割下は、甘みとコクのバランスが極めて緻密に計算されており、馬肉特有の鉄分と旨味を極限まで引き出します。
「時代が変わっても、肉の繊維の断ち方ひとつで食感がまるで変わる。先代の手元を見て身体で覚えた技術だけは変えられない」――関係者の証言が物語るように、四代にわたる技術の継承こそが、暖簾の重みを支える唯一無二の根拠となっています。