このキャンペーンに対するネット上の誤解の一つが、「マクドナルドがW杯公式スポンサーだから日本代表応援を前面に出せる」というものだ。実際には、マクドナルドはFIFAワールドカップのグローバルスポンサーではあるものの、日本代表チームや日本サッカー協会(JFA)との直接的なスポンサー契約は締結していない。そのため、公式発表資料でも「日本代表応援キャンペーン」という表現は使われておらず、あくまで「日本を応援する気持ちをデザインに込めた」という立ち位置だ。この法的なグレーゾーンを巧みにデザインとコピーで乗り切っている点こそ、マーケティングの巧妙さと言える。
もう一つの盲点は、このセットが「ハッピーセット」ではないという点だ。ネット上では「マクドナルド 期間限定 ハッピーセットのW杯版」と誤解されることが多いが、公式の分類ではレギュラーセットに限定特典を付与した「キャンペーンセット」であり、ハッピーセットとは別の購買動線となっている。これにより、子どもだけでなく大人のコレクション需要を狙うことに成功している。
社会学的に見ると、この現象は「応援消費」と「限定コレクション心理」の複合的な発露である。W杯イヤーの国民的祭典ムードの中で、人々はチームを直接応援する手段として、手に取りやすいファストフードの限定商品を選んでいる。心理学者の研究では、応援対象への帰属意識が強いほど、関連商品の購買意欲が高まり、さらに「数が限られている」という希少性の知覚がそれを加速させることが知られている。マクドナルドはこの心理的メカニズムを極めて戦略的に活用しているのだ。