伊右衛門のCMを語る上で、音楽の力を無視することはできません。2004年の第1作からCMソングとして使用されている久石譲氏作曲の『Oriental Wind』は、日本のコマーシャルソング史において最も認知度の高い楽曲の一つです。
この楽曲は、スタジオジブリ作品の音楽などを手掛ける久石氏が、伊右衛門のために特別に書き下ろしたオリジナル作品です。ピアノの繊細なアルペジオと和楽器の雅な音色、そして壮大なオーケストレーションが融合したメロディは、どこか懐かしくも新しい「日本の美意識」を想起させます。
『Oriental Wind』の特筆すべき点は、CMの演出意図や季節の移ろいに合わせて、数十種類以上のアレンジバージョンが制作されてきた点にあります。
- 春編:箏(こと)や篠笛の音色を強調し、芽吹きと華やかさを演出
- 夏編:テンポを抑え、涼やかな風鈴の余韻を感じさせるアコースティック編成
- 秋・冬編:チェロやストリングスの重厚な響きで、温もりと情緒を際立たせる構成
音響心理学の観点からも、この旋律は視聴者に「静寂」「上質」「本物感」を直感的に想起させる効果を持っています。街中やテレビからイントロが数秒流れるだけで「伊右衛門だ」と認識させる強力なブランドアセットとして、20年以上にわたり機能し続けています。