美空ひばりの闘病を語る上で欠かせないのが、1988年4月11日に開催された東京ドームのこけら落とし公演「不死鳥コンサート」です。このステージは、まさに彼女の命を削った奇跡の舞台でした。
当時、ひばりが患っていた特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨の骨頭部分への血流が途絶えて骨組織が壊死し、関節が破壊されていく国の難病指定疾患です。体重をかけるだけで凄まじい激痛が走るため、日常生活の歩行すら困難な状態にありました。
関係者や医療スタッフの証言によると、ステージの袖には万一の事態に備えて医師団が待機し、舞台裏にはベッドと酸素吸入器、さらには救急車まで手配されていたといいます。ひばりは控室からステージに上がる直前まで激痛に耐え、脂汗を流しながらも、照明を浴びた瞬間に満面の笑みを浮かべて全39曲を歌い上げました。フィナーレでは、長さ100メートルに及ぶ花道を毅然とした足取りで歩き切る姿を見せ、観客5万人を熱狂の渦に巻き込みました。この命がけのパフォーマンスこそが、彼女が「不世出の歌姫」と呼ばれる所以です。