鼻の周囲や内部に生じる病変は、一見するとどれも似たような赤い突起に見えます。しかし、発生している皮膚組織の深さや病原体、発症メカニズムはまったく異なります。痛みが強いのか、それとも治らずに長期間残っているのかによって疑うべき疾患は明確に分かれます。
まず、触れるだけで飛び上がるような激痛を伴う場合、代表的な原因として挙げられるのが毛嚢炎(毛包炎)と、それが深部まで進行しためんちょう(せつ・疔)です。毛嚢炎は毛根を包む毛包に黄色ブドウ球菌などの細菌が侵入して起こる浅い化膿性炎症ですが、鼻は皮脂分泌が極めて盛んで毛穴が深く、皮下組織が軟骨と強固に癒着しているため、わずかな内圧の上昇でも神経を強く圧迫し、激痛を引き起こします。
一方、鼻の穴の入り口付近に白い膿疱ができている場合は、鼻前庭炎(びぜんていえん)が疑われます。鼻毛の生え際にある小さな傷から常在菌が侵入することで発症し、乾燥した鼻くそがこびりついたようなかさぶたや、鼻の穴のできものが白い膿を抱えて腫れ上がる症状が特徴です。アレルギー性鼻炎で頻繁に鼻をかむ人や、無意識に鼻の穴をいじる癖がある人に好発します。
さらに、「痛みはそれほど強くないが、何週間も治らない」「触ると硬い感触がある」というケースでは、感染症以外の疾患を考慮しなければなりません。代表格が粉瘤(アテローム)です。皮膚の下にできた袋状の構造物に角質や皮脂が蓄積する良性腫瘍であり、出口が塞がれているため自然治癒することはありません。中央に小さな黒点が見られることが多く、袋が破れて二次感染を起こすと赤く腫れ上がり激痛を伴う「炎症性粉瘤」へと移行します。また、皮脂腺の異常増殖である皮脂腺増殖症や、稀に基底細胞がんなどの悪性腫瘍が初期ニキビと誤認される事例も臨床現場から報告されています。