日常会話で「盲腸」と総称される臓器は、解剖学的には大腸の始まりに位置する袋状の部分を指します。具体的には、小腸(回腸)から大腸(結腸)へと移行する右下腹部の深部に収まっています。激しい腹痛を引き起こして緊急手術の対象となる病巣は、この盲腸そのものではなく、盲腸の後内側から細長く垂れ下がる約6〜8センチメートルの細い管「虫垂(ちゅうすい)」です。
医学的に痛みの震源地を特定する際、重要な指標となるのが「マックバーネー点(McBurney's point)」です。右の腰骨の前にある突起(右上前腸骨棘)とおへそを結んだ直線上で、腰骨側から約3分の1に位置するポイントを指します。また、左右の腰骨を結ぶ線上で右側3分の1に位置する「ランツ点」も、虫垂の開口部付近を示す指標として臨床現場で頻繁に用いられます。
かつて虫垂は「進化の過程で退化した不要な器官」と見なされていましたが、消化器免疫学の進展によって見解は一変しました。近年の研究ニュースでも大きく報じられている通り、虫垂は腸内細菌のバランスを健全に維持し、病原菌感染時に善玉菌を補給する「免疫リンパ組織の安全なシェルター」として極めて重要な役割を果たしている事実が科学的に証明されています。不要だから安易に切除する時代から、病態の進行度に応じて保存的治療(抗菌薬治療)と外科的切除を適切に選択する時代へと移行しています。