小菅のアパートで起きた押谷道子殺害事件、そして河川敷のホームレス焼死事件。これらすべての真犯人は、演出家の浅居博美でした。
滋賀の老人ホームで働いていた押谷道子は、施設に入居していた博美の母・厚子に会いに訪れた際、偶然にも「浅居忠雄」と名乗る老人を目撃します。中学時代に自殺したと聞かされていた同級生の父親が生きていたことに驚いた道子は、上京して舞台演出家として成功を収めていた博美の元を訪ねました。
道子には悪意はなく、「お父さんに会わせてあげたい」という純粋な善意からの行動でした。しかし、その善意こそが浅居親子にとって致命的な破滅の引き金となります。忠雄が生きていることが世間に知られれば、過去の逃亡劇や戸籍の偽装、さらには過去に起こした事件の全貌が暴かれ、博美が血のにじむ努力で築き上げた演出家としての地位も人生もすべて水泡に帰してしまう状況でした。
博美は道子をアパートへ連れて行き、父と引き合わせるふりをして道子の首を絞めて殺害しました。愛する娘の未来を守るため、そして娘にこれ以上の重荷を背負わせないため、父・忠雄はその死体を隠蔽し、自らも姿を消す決意を固めます。