長年親しまれてきた「家族そろって炬燵で楽しむ歌番組」という枠組みから、紅白が大きく舵を切った最大の引き金は、NHK紅白のグローバル戦略と視聴率指標の抜本的な見直しにあります。かつて50〜60%台を叩き出していた世帯視聴率は、近年では第2部でも30%台前半に落ち込む局面が増加しました。この数字以上に制作陣を震撼させたのが、テレビをリアルタイムで保有・視聴しない10代から30代の「若年層離れ」です。
民放各局が個人視聴率やコア層(13〜49歳)を重視するように、NHKもまた「将来の公共放送の支持基盤」となる若年層のリーチ率、そして見逃し配信サービス「NHKプラス」の再生回数を最重要指標(KPI)に据えるようになりました。ここで浮上したのが、紅白歌合戦に海外アーティストが増えた理由そのものです。現代のデジタルネイティブ世代にとって、音楽チャートの主流はストリーミングサービスであり、Billboard JAPANやSpotifyのトップを占めるのは国内アーティストとシームレスに並び立つK-POPや海外ポップスです。若者の音楽消費実態を反映させれば、自然と海外勢の起用が増える構造になっています。
さらに見逃せないのが、国際放送「NHKワールド・プレミアム」を通じた世界約100カ国以上への同時配信と、YouTubeやX(旧Twitter)での公式切り抜き動画の波及効果です。世界規模のファンダムを持つアーティストが登場することで、番組関連ワードが世界トレンドの上位を独占し、大晦日の夜に地球規模のエンゲージメントを獲得できるメリットが局側にはあります。