雑誌連載時のラストは、ミカサが丘の木の下にあるエレンの墓の前に佇み、一羽の鳥がマフラーを巻き直して飛び去るという、ある種の叙事詩的な余韻を残す幕引きでした。しかし、2026年6月に発売された単行本34巻の追加ページによって、読者はさらなる衝撃に直面することになります。
追加された加筆カットでは、ミカサが家族と思しき人物や子どもと共にエレンの墓を訪れ、老衰によって息を引き取るまでの生涯が描かれます。さらに時代は残酷なまでに進み、近代的な高層ビルが立ち並ぶパラディ島の未来が映し出された後、突如として激しい爆撃を受け、島は一面の焦土と化します。
文明が崩壊し、長い年月を経て再び鬱蒼とした森へと戻った廃墟の中、武装した一人の少年と犬が、かつてエレンが眠り、巨大な大木へと成長した「あの樹」の根元に空いた巨大な洞(うろ)を見つめるシーンで物語は幕を閉じます。この加筆の意味について、公式インタビューなどで諫山氏は「描くべきだった現実」として、争いの連鎖の不可避性を表現したかった旨を語っています。
巨人の力をこの世から消滅させても、兵器が近代化しようとも、人間が存在する限り争いは根絶されない。そして、あの樹の空洞は、かつて始祖ユミルが有機生物の起源と接触した場所を想起させます。巨人の力という形ではなくとも、生きる者の内なる欲望や孤独が、再び未知の力を呼び寄せるかもしれないという「歴史の永劫回帰」を暗示しているのです。