「支持したい政党も候補者もいない。だからといって棄権するのは嫌なので、白票を投じて抗議の意思を示したい」――こうした行動をとる有権者は少なくありません。ネット上でも定期的に「白票が増えれば、既存政党への痛烈なノーのメッセージになる」という言説が拡散されます。
結論から申し上げますと、公職選挙法において「白票」は単なる「無効票」として分類され、政治的な抗議メッセージとしての法的効力はゼロです。
開票所における実態を取材すると、白票は「誰の名前も書かれていない紙」として、候補者名の間違いや判別不能な落書きと同じカテゴリで集計されます。選管の最終発表資料には「無効票:〇〇票」と一行記載されるだけで、それが「政治への純粋な抗議」なのか「単なる記載ミス」なのか「ふざけて投じた紙」なのかを判別・追跡する仕組みは一切存在しません。
さらに深刻なのは、「白票を投じる行為は、結果的に組織票を持つ既存勢力を強力に援護射撃している」という逆説です。
白票は有効投票総数に含まれないため、当選に必要な法定得票数や得票率の計算分母から除外されます。つまり、白票を投じることは「組織票の勝率を上げている」という点で、投票所に行かず寝ている「棄権」と数学的に全く同じ結果を生み出します。わざわざ投票所まで足を運び、身分確認を受け、投票用紙を受け取って白紙で出すという労力を払った結果、自分が最も忌み嫌っているはずの利権候補者を勝たせているのです。
もし既存の候補者に強い不満があるならば、白票を投じるのではなく、「最も当選してほしくない候補者の対立軸にいる候補者」へ消去法で1票を投じるほうが、現職の権力者にとってはるかに脅威となります。政治家が最も恐れるのは「抗議の白票」ではなく、「自らの落選につながる対抗馬の有効票」にほかなりません。