一方、テニス界におけるアンダーハンドサーブは、バレーボールとは全く異なる文脈で世界的な注目を集めてきました。ニック・キリオスやアレクサンダー・ブブリクといったプロ選手が、ベースラインのはるか後方に下がる相手レシーバーの意表を突いてドロップショット気味に繰り出すプレーが、幾度となくSNSやメディアで激しい議論の的となっています。
まず事実関係として押さえるべきは、アンダーハンドサーブのルール上の反則性です。国際テニス連盟(ITF)が定める公式テニス規則において、サーブに関する規定は「サーバーはボールを手から放し、ボールが地面に落ちる前にラケットで打たなければならない」と定められているのみです。スイングの方向(上から叩くか、下から掬い上げるか)に関する制限は一切存在せず、テニスのアンダーハンドサーブは100%完全な合法的プレーです。
ではなぜ、テニスのアンダーハンドサーブがマナー論争へと発展するのでしょうか。その背景には、テニスが古くから重んじてきた「紳士・淑女のスポーツ」としての伝統的エチケット観が存在します。一部の観客や解説者からは「相手を侮辱する行為」「正々堂々とした力勝負の否定」と批判されることがあります。
しかし、近年の戦術分析やプロ選手の証言を総合すると、評価は大きく変化しています。深すぎるリターンポジションを取る相手に対する「戦術的な対抗策(ポジショニングの矯正)」としての合理性が広く認知されるようになりました。決して相手を愚弄するための手段ではなく、チェスのように相手の裏をかく高度な戦術的駆け引きの一環として捉えるのが、2026年時点のグローバルスタンダードな見解です。