暴力団組織を取り巻く現代の現場では、かつての「ヤクザ=刺青」という常識が崩壊しつつあります。組織幹部や警察関係者の証言によると、近年新たに加入する若手組員や、半グレ・トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と交わる構成員の多くは、「あえて刺青を彫らない」選択をしています。
その背景には、極めて実利的なリスク管理が存在します。警察当局は逮捕・摘発時に身体特徴として刺青の絵柄や位置を細部まで撮影・データベース化するため、刺青は決定的な個人識別情報(証拠)になってしまいます。また、シノギ(資金獲得活動)の現場がサイバー詐欺や不透明なビジネスへ移行するなかで、刺青を隠しながら生活するデメリットが大きすぎるためです。
さらに、組織を離脱した元組員の社会復帰支援において、「刺青除去」の需要が過去最高水準に達しています。全国の暴力追放運動推進センターや提携医療機関では、就職活動や住居確保の障壁となる刺青をレーザーや切除手術で消し去るプログラムを展開しています。しかし、広範囲の和彫りを除去するには数年単位の時間と多額の自己負担、そして消えない手術痕との葛藤が伴うのが過酷な現実です。