ネット上ではしばしば「トナラーは病気ではないか」「精神的な障害があるのではないか」といった過激な言説が飛び交う。このトナラー病気説の真相について、精神医学や行動科学の見地から冷静に検証する必要がある。
結論から言えば、トナラー行為そのものを特定の精神疾患や病気として定義する医学的診断名は存在しない。多くの場合、これはパーソナルスペースの個人差によって生じる摩擦だ。アメリカの文化人類学者エドワード・ホールが提唱した「プロクセミックス(近接空間論)」によれば、他者が入ると不快感を覚える距離(個体距離:45cm〜1.2m)には大きな個人差がある。育った環境や気質によって、この防衛境界線が極端に狭い人は、他人に密着されてもストレスを感じないため、相手の空間に侵入することへの抵抗感も希薄になる。
ただし、臨床心理学の現場からは、発達特性との関連性も指摘されている。注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ一部の人は、周囲の空気を読む「暗黙の社会的文脈」の理解が苦手であったり、視覚的な空間認知の偏りから「空いているからどこでも同じ」「端から順番に埋めるのが正しいルール」と論理的・機械的に判断してしまう傾向がある。これらは悪意による加害行動ではなく、他者の感情を推し量る機能のアンバランスから生じる現象だ。
病気と決めつけるのは短絡的だが、「相手は自分と同じ常識や距離感を持っていない」という前提で接することが、無用なトラブルを防ぐ第一歩となる。