イギリス発祥とされる結婚記念日の数え方において、結婚10年目は「錫婚式(すずこんしき)」、またはアルミニウム婚式と呼ばれます。金婚式(50年)や銀婚式(25年)に比べて知名度で劣る印象を持たれがちですが、用いられる金属の意味を知ると、実に示唆に富んだ名付けであることがわかります。
錫(すず)という金属には、主に3つの際立った特徴があります。
- 酸化・腐食に強く、錆びにくい:水や空気に触れても美しい輝きを長期間保ち続ける。
- 柔らかく柔軟性に富む:手で曲げられるほどしなやかで、強い衝撃を受けても砕け散ることがない。
- 高い浄化作用と温もり:古くから酒器や茶器に用いられ、雑味を吸着して中身をまろやかにする。
これらはすべて、10年間という歳月を共にしてきた夫婦の理想形そのものです。新婚当初のような硬く尖った自己主張をぶつけ合うのではなく、「錫のようにしなやかにお互いの形に寄り添い、歳月を経ても錆びつかない清らかな関係」を育む。これこそが錫婚式の本質的な意味です。
近年では、伝統工芸である富山県高岡市の錫製タンブラーやフラワーベース、あるいは錫製のアクセサリーを記念の品として贈り合い、互いの柔軟さを讃え合うスタイルが20代後半〜30代の共働き世代を中心に再評価されています。