物語の発端は、ある粉挽き屋の死から始まります。長男には水車小屋、次男にはロバ、そして三男に残されたのは一匹の猫だけでした。途方に暮れ、「猫を食べて皮で手袋でも作るしかない」と嘆く青年に、猫は人間の言葉でこう語りかけます。「私に袋と、藪の中を歩くための長靴を一足仕立ててください。そうすれば、あなたが受け取った遺産が決して無駄ではなかったと分かります」。
長靴を履いて二足歩行を始めた猫は、まず森で罠を仕掛け、捕らえたウサギやヤマウズラを国王のもとへ運びます。その際、「我が主君、カラバ侯爵からの献上品でございます」と架空の貴族の名を騙り、数か月にわたって国王への贈答を繰り返して宮廷の信用を勝ち取っていきます。
決定的な瞬間は、王と美しい王女が川沿いを馬車で散策する日に訪れました。猫は青年に衣服を脱いで川へ飛び込むよう命じ、通りかかった馬車に向かって「カラバ侯爵が川で溺れている! 盗賊に服を奪われた!」と叫びます。かつて数々の献上品を受け取っていた王は即座に近衛兵に救出を命じ、王室の豪華な衣服を青年に与えました。粗末な身なりから一転、華麗な貴族の装いをまとった青年に王女は一目で恋に落ちます。
馬車の先回金をした猫は、道中の農民や刈り入れ人たちに対し、「『この土地はカラバ侯爵のものだ』と王様に言わなければ、八つ裂きにしてミンチにする」と脅迫。王が農民に土地の主を尋ねると、怯えた農民たちは口を揃えて「カラバ侯爵様の土地です」と答え、王は青年の領地の広大さに驚嘆します。
そして最大の難関である城の主、変身能力を持つ凶悪な人喰い鬼(オーガ)の館へ乗り込んだ猫は、巧みな心理戦を仕掛けます。「ライオンや象になれるのは知っているが、ネズミのような小さな動物に変身するのは不可能でしょう?」と挑発。プライドを刺激された鬼がネズミに姿を変えた瞬間、猫は飛びかかって丸呑みにしてしまいます。主を失った豪奢な城を「カラバ侯爵の城」として王を迎え入れ、感銘を受けた王は王女との結婚を即決。貧しい粉挽き屋の三男は王の娘婿となり、猫は大貴族(大領主)となってネズミ狩りをただの道楽として楽しむ身分へと成り上がりました。