憲法第19条の条文は、わずか1文で簡潔に記されています。
「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」(憲法第19条)
この条文が持つ最大の法意は、内心の自由に対する絶対的保障です。表現の自由(第21条)や信教の自由(第20条)に基づく外部活動など、多くの人権は他人の権利を侵害しないよう「公共の福祉」による制約を受けます。しかし、憲法第19条が保護する「心の中の思いや世界観」は、外部に行為として現れない限り誰の迷惑にもならず、危害も生み出さないため、いかなる制約も受けない「絶対無制約の権利」と解されています。
この条項が生まれた背景には、江戸時代のキリシタン弾圧で行われた「踏絵」や、戦前・戦時下における治安維持法による思想犯の検挙、国家神道の強制といった歴史的教訓があります。国家が個人の内心に踏み込み、特定の思想を植え付けたり、逆に放棄を迫ったりすることは、個人の尊厳を根本から破壊する行為であるという強い危機感が根底にあります。
なお、憲法第20条が「宗教的な信仰」を専門に保障しているのに対し、憲法第19条は宗教にとどまらず、個人の世界観、歴史観、倫理観、政治的信条、人生観など、人間の精神活動全般を広く包括している点が特徴です。