なぜ白昼の住宅街で痕跡が途絶えてしまったのか。この疑問を解く鍵は、環境犯罪学(CPTED)および京都特有の都市空間構造にあります。
京都の住宅街には、古くからの「通り」と「路地(ろじ)」、「辻子(ずし)」と呼ばれる細い抜け道が無数に入り組んでいます。表通りは観光客や車両の往来が多く自然監視性が高い反面、一歩路地に入ると幅員2メートル未満の狭小路が続き、外側からの見通し(見通し性)が極端に低下します。防犯カメラの手がかりが途絶えた場所も、まさに表通りから死角となる路地への接続ポイントでした。
犯罪機会論の視点から見ると、このような空間は「入りやすく、見えにくい」という犯罪インフラの脆弱性を抱えています。近隣住民にとっては慣れ親しんだ安全な抜け道であっても、防犯工学的には周囲の視線が届かないブラックボックスとなり得るのです。ネット上では「誰にも見られずに連れ去ることは不可能だ」という意見が多く見られますが、都市構造の盲点を突けば、わずか数十秒の間に視覚的空白が生じることは十分にあり得ます。