作中で「海の母」と呼ばれるグランマンマーレの正体は、特定の個体としての生物ではなく、広大な海そのものの生命力と意志が具現化した女神です。名前の「グランマンマーレ(Gran Mammare)」は、イタリア語で偉大を意味する「Gran」と、母を意味する幼児語「Mamma」、海を意味する「Mare」を掛け合わせた造語とされています。
航海中の船員たちが彼女の姿を目撃した際、「観音様が現れた!」と手を合わせる印象的な場面があります。宮崎駿監督は制作現場において、彼女のビジュアルや立ち位置に仏教の「観音菩薩(特に魚籃観音や海上安全を守る菩薩)」のイメージを取り入れたことを明かしています。観音菩薩は性別を超越した究極の慈悲の象徴であり、海で生きる者たちに救いと加護を与える存在として古くから信仰されてきました。
さらに西洋神話における海の原初の女神や、大地の母神デメテルの要素も混ざり合っています。美しく穏やかでありながら、時には世界の生態系を一変させるほどの力を持つ彼女は、単なるキャラクターを超えた「大自然の概念そのもの」として描かれています。