104期生のユミルが辿った生涯は、理不尽な運命と欺瞞に満ちたものでした。マーレの貧民街で親も素性も知らずに育った彼女は、ある男に拾われ「始祖ユミルの生まれ変わり」という嘘の偶像に仕立て上げられます。信徒たちから拝まれ、温かい食事と寝床を得た少女は、自分が嘘をつき続けることで多くの人々が救われるならと、偽りの神を演じ続けました。
しかし、マーレ治安当局の手入れが入った際、首謀者はすべての罪を少女になすりつけます。少女は民衆をかばって「自分がユミルだ」と叫び、裏切りと憎悪を浴びながらパラディ島へと追放され、巨人化薬を注射されて約60年間もの悪夢(無垢の巨人の彷徨)を味わうことになったのです。
奇跡が起きたのは845年、パラディ島潜入作戦を決行中だったマーレの戦士たち(ライナー、ベルトルト、アニ、マルセル)の野営地に遭遇した瞬間でした。無意識のうちにマルセルを捕食した彼女は、「顎の巨人」の力を継承して奇跡的に人間の肉体を取り戻します。壁内で目覚めた彼女は、「二度と自分に嘘をつかず、自分のために生きる」と心に誓いました。
訓練兵団に入隊したユミルは、自らと同じく「生まれながらに存在を否定され、偽りの名を名乗らされていた」王家の私生児、クリスタ・レンズ(ヒストリア・レイス)と運命的な出会いを果たします。ユミルはヒストリアに激しい共感を抱き、彼女を守り、彼女が自分自身の名前で誇り高く生きられるよう導くことを自らの存在理由としました。
多くの読者が胸を締め付けられたユミルの死亡理由は、ウトガルド城での戦いで巨人化能力を明かした後、ライナーとベルトルトに同行した決断にあります。エレン奪還作戦の混乱の中、ユミルはヒストリアと共に壁内へ戻る選択肢もありました。しかし彼女は、マルセルを奪ったことで帰国すれば処刑される運命にあるライナーたちの苦境を見捨てることができませんでした。
「バカ正直な女神様ごっこも、案外悪くない」――そう言い残し、ユミルは自らの意志でマーレへ渡りました。そしてマーレ軍の手によって、マルセルの弟であるポルコ・ガリアードに捕食され、その生涯を閉じます。ヒストリアに遺した手紙の最後には、「お前と結婚できなかったことだけが心残りだ」という不器用で純粋無垢な愛の言葉が綴られていました。