ワットの功績を正しく測るには、半世紀以上前にトーマス・ニューコメンが開発した先行機との比較が欠かせません。ニューコメンの蒸気機関との違いは、単なる部品の追加ではなく、根本的なエネルギー設計思想の転換にありました。
ニューコメン機は「大気圧機関」と呼ばれ、蒸気自体の圧力ではなく、蒸気が凝縮した際に生じる真空によって大気圧がピストンを押し下げる力のみを利用していました。そのため、炭鉱の立坑から湧き出る地下水を排水する用途には役立ったものの、燃料である石炭を極端に消費するため、「燃料がタダ同然で手に入る炭鉱の坑口」以外ではコストが高すぎて運用できなかったのです。
これに対し、ワットは蒸気の膨張圧力自体を積極的に活用し、さらに復水器で急激な凝縮を起こす複合機構を確立しました。ワットの蒸気機関の改良点詳細としては、復水器の追加に加えて、ピストンの直線運動を回転運動へ滑らかに変換する「遊星歯車機構(サン・アンド・プラネット・ギア)」、蒸気バルブを自動調整して一定の回転数を維持する「遠心調速機(ガバナー)」の採用が挙げられます。