外野のファンが「倒せない」と騒ぐ一方で、那須川天心選手を間近で見守るプロボクサーの反応や、所属する名門・帝拳ジム首脳陣の評価は全く異なる次元にあります。
数々の世界王者を輩出してきた帝拳ジムの本田明彦会長をはじめとする指導陣は、那須川選手の現在のキャリアを「極めて順調な育成プロセス」と捉えています。ボクシングの長い歴史において、最初から派手なKO勝ちを狙いすぎたスピードスターが、手痛いカウンターを浴びてキャリアを狂わせるケースは枚挙にいとまがありません。帝拳陣営が最優先しているのは、「打たれずに打つ」ボクシングの基本原則の徹底です。
実際にスパーリングを経験した元世界王者や現役日本ランカーたちも、取材に対して次のように証言しています。
「天心選手のパンチは『見えない』。威嚇するような重さはないが、気づいた時には顔面を捉えられている。痛烈に効かされるというより、集中力を削がれ、体力を奪われて心が折れる感覚に近い」
相手を昏倒させる一発の強打はないものの、12ラウンドにわたって被弾をゼロに抑え込み、的確にポイントを積み上げる能力はすでに世界トップクラスです。関係者たちは「倒せるパンチ」の習得はキャリアの最終ピースであり、現段階で無理にKOを狙いに行く必要はないと一致して分析しています。