耳介軟骨移植を検討する際、最も多くの人が懸念するのが「移植した軟骨が体に吸収されて元に戻ってしまうのではないか」という疑問です。医学的な知見に基づくと、移植された自家軟骨は周囲の組織から毛細血管が引き込まれることで生着しますが、その過程でおよそ10%〜20%程度の軟骨吸収率が生じるのが一般的とされています。
重要なのは、この吸収プロセスが起こるのは主に術後3か月から1年の間という点です。1年が経過して完全に周囲組織と癒着・生着した軟骨が、10年後に突如として溶けてなくなることは基本的にありません。しかし、10年というスパンでは身体全体のエイジングが進みます。鼻先の皮膚が加齢とともに薄くなることで、移植軟骨の輪郭が浮き出て見えたり、逆に周囲の脂肪組織の変化によって鼻先の高さが落ちたように感じられたりするケースが存在します。
また、鼻尖縮小と耳介軟骨移植を同時に受けた場合、術後数年を経て「鼻先が太く戻った」と感じる人がいます。この鼻尖縮小の後戻り理由として挙げられるのは、軟骨自体の吸収ではなく、内部に生じた瘢痕組織(傷を修復しようとする結合組織)の増殖や、鼻翼軟骨を縛り寄せた糸の緩み、皮膚の厚みの回復によるものです。構造的な変化と軟骨自体の変化を混同しないことが、長期経過を正しく評価する第一歩となります。