炭火を用意できない現代の住居環境において、炭火焼きの模倣は返って失敗を招きやすい。ガスコンロやトースターで直火に当てすぎると、外側が縮み、内側の水分が抜けてパサパサの木片のような食感に陥ってしまう。
家庭で狙うべき最適解は、厚手のアルミホイルを用いた「蒸し焼き」だ。大きめに切ったアルミホイルの中央に、縦半分または4等分に裂いた松茸を並べる。ここに純米酒を数滴、パラリと良質な海塩を振る。そして、蒸気が一切漏れないよう周囲を隙間なく二重に折り込んで密閉する。
魚焼きグリルの中火で約6〜7分。ホイルがパンパンに膨らみ、内部の気圧が上がった瞬間が引き上げ時だ。食卓でホイルを切り開くと、濃縮された白煙とともに、森林の湿り気を思わせる強烈なアロマが爆発する。スダチを数滴絞り、にじみ出たエキスごと口へ運ぶ。炭火では決して回収できない「茸自身の水分」をすべて飲み干す快楽がここにある。