里中氏のキャリアを語る上で欠かせない傑作群は、少女漫画の黄金期を築き上げた記念碑的な作品ばかりです。
第1回講談社漫画賞を受賞した『アリエスの乙女たち』は、思春期の揺れ動く心理や愛憎劇を鮮烈に描き、1980年代にはフジテレビ系列でテレビドラマ化されて社会現象を巻き起こしました。ギリシャ神話をモチーフにした叙情的な世界観は、当時の若者たちの心を強く揺さぶりました。
また、第二次世界大戦末期の満洲からの引き揚げをテーマにした『あした輝く』は、戦争の悲惨さと極限状態における人間の尊厳を真正面から描いた名作です。10代半ばから過酷な歴史の真実に向き合ってきた里中氏の作家性の深さを示しています。
さらに後年手掛けた『マンガ日本の古典・古事記』では、難解とされがちな神代の物語を親しみやすくダイナミックに再構築。歴史や古典を誰もが楽しめるエンターテインメントへと昇華させる手腕は、唯一無二の評価を得ています。