ネット検索を行うと、「犬の指間炎にオロナインが効く」「人間用の市販軟膏で治った」といった無責任な体験談が散見されます。しかし、獣医学的な観点から言えば、犬の指間炎にオロナインを自己判断で使用するのは極めて危険な行為です。
オロナインH軟膏の主成分であるクロルヘキシジングルコン酸塩は、殺菌作用を持つ一方で、軟膏の基剤に含まれる油分(ワセリンやオリブ油など)が指の間に強固な油膜を形成します。通気性が悪化した指間は蒸れ上がり、湿潤環境を好むマラセチア菌の活動をかえって助長する結果になりかねません。さらに、塗布された軟膏を犬が直接舐め取ることで、消化器系への負担や下痢を引き起こす恐れもあります。
「人間用の犬の指間炎に使える市販薬を薬局で探す」という試みも推奨されません。人間用の皮膚疾患治療薬には、犬にとって毒性の強い成分や、自己判断で使用すると皮膚萎縮を引き起こす強ランクのステロイドが含まれている場合があるためです。
「少し様子を見れば自然治癒するのではないか」という期待も捨てるべきです。初期の軽度な赤みであれば散歩後の乾燥や安静で軽快することもありますが、犬の指間炎における自然治癒の可能性は、すでに犬が足を執拗に舐めている段階ではほぼゼロに等しいと言わざるを得ません。炎症が真皮深層に達すると、組織が破壊されて血豆状の肉芽腫や瘻管(トンネル状の穴)が形成され、外科的な切除や数ヶ月に及ぶ強力な抗菌治療を余儀なくされる深刻な事態へ発展します。