2022年のテレビドラマ界を語る上で避けて通れないのが、「世帯視聴率」と「作品の真の熱狂度」の間に生じた決定的な乖離です。その象徴となった作品が、7月期の日テレ系で放送された『初恋の悪魔』でした。
脚本家・坂元裕二氏が書き下ろした本作は、鹿浜理森(林遣都)、馬淵悠日(仲野太賀)、摘木星砂(松岡茉優)、小鳥琉夏(柄本佑)という、いずれも第一線の捜査権を持たない警察署の「訳あり窓際カルテット」が自宅リビングで事件を推理していくミステリーコメディとして開幕しました。しかし物語中盤、摘木星砂の解離性同一性障害(二重人格)と過去のトラウマ、警察組織の暗部が複雑に交錯する本格サイコサスペンスへと変貌を遂げます。
ビデオリサーチによる関東地区の平均世帯視聴率は4.7%前後と数字上は苦戦を強いられましたが、SNS上では毎話放送後に考察が乱れ飛び、TVerのお気に入り登録数は民放ドラマ上位を独走しました。当時の取材現場でも、ある民放キー局プロデューサーは「視聴率の指標が世帯からコア層(13〜49歳)や配信再生回数へ不可逆的にシフトしたことを証明したマイルストーン」と語っています。
本作が放送批評懇談会による第60回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞を受賞した事実は、目先の世帯視聴率という旧来のモノサシでは測れない、脚本・演出・演技の圧倒的な完成度を業界内外が公式に認めた結果といえます。