糺の森の起源は極めて古く、発掘調査では縄文時代の土器や住居跡が発見されています。平安京遷都以前から賀茂氏の祭祀場として守り継がれ、1994年には下鴨神社とともに世界遺産「古都京都の文化財」に登録されました。市街地平坦部に残る落葉広葉樹林としては西日本唯一規模であり、都市開発の波を免れて奇跡的に原生林の姿を保っています。
森を縦断する清流「瀬見の小川」や、社殿東側の御手洗池(みたらしいけ)の湧水は、下鴨神社の祭祀と切り離せません。御手洗池の底から吹き出す清らかな湧水の水泡をかたどって生まれたのが「みたらし団子」の発祥とされています。この湧水は土用の丑の日の「足つけ神事」をはじめとする穢れ(けがれ)を祓い清める儀式の舞台となってきました。
毎年5月に開催される京都三大祭りの一つ「葵祭(賀茂祭)」では、糺の森を舞台に厳粛な儀式が執り行われます。平安絵巻を思わせる総勢500名以上の行列が森の参道を進む光景は、千年の時を超えて受け継がれる日本の精神文化を象徴するものです。平安時代から続く葵祭の儀式の経緯を辿ると、国家の安寧と五穀豊穣を祈る最高峰の国家祭祀として糺の森が機能してきた歴史的重みが浮き彫りになります。