耳の中で虫が蠢く不快感に襲われた際、多くの人が咄嗟に手を伸ばしてしまうのが綿棒や耳かき、ピンセットです。しかし、医療現場の医師たちが口を揃えて「絶対にやってはいけない」と警告するのが、この異物を耳道内へ差し込む行為です。
東京都杉並区のにしおぎ耳鼻咽喉科クリニックの解説によると、成人における外耳道の長さは約3.0cmであり、直線ではなく緩やかなS字カーブを描いて鼓膜へと続いています。外耳道の内側3分の2は皮膚が極めて薄く、その下にはすぐ骨膜と骨が存在するため、わずかな物理的刺激でも神経が強く刺激され、激痛が走ります。ここに綿棒や耳かきを無理やり挿入すると、次のような致命的な事態を招きます。
第一に、侵入した虫は外耳道の壁と綿棒の間に挟まれ、身の危険を感じて猛烈に暴れ回ります。虫が逃げ場を失って奥へ奥へと突き進んだ結果、外耳道最深部に位置するデリケートな鼓膜を爪や牙で引っ掻き、鼓膜穿孔を生じさせるケースが多発しています。第二に、手探りで虫をつまもうとすることで虫体が外耳道内で潰れてしまい、体液や細菌が傷ついた粘膜に直接付着して、激しい感染症や化学性炎症を引き起こす危険性があります。
耳に虫が入った時の初期動作として推奨される耳の虫の安全な出し方は、まず「何も道具を入れない」ことです。wikiHowなどの国際的なファーストエイドガイドや臨床医が推奨するように、まずは虫が入った側の耳を地面(下)に向けて頭を傾け、耳介(耳たぶや耳の外側)を後上方へ優しく引っ張りながら、頭を小刻みに揺らす方法が安全です。成人の外耳道は耳介を斜め後ろ上に引くことでカーブが直線に近くなり、虫が外耳道の入り口付近にいる場合であれば、重力によって自然に転がり出たり飛び出したりする確率が高まります。