小学館が発行する『ビッグコミックスピリッツ』誌上で1983年に連載がスタートした『美味しんぼ』は、それまでの漫画業界における「料理マンガ」の概念を根底から覆した。単に料理の美味しさを競うだけでなく、食材の生産背景や環境問題、人間模様までを緻密に描き出すスタイルは、大人の鑑賞に耐えうるサブカルチャーの新しい潮流を作った。
その中心にいた栗田ゆう子は、まさに同誌の黄金期を象徴するヒロインだった。男性読者が中心だった当時の青年誌において、彼女の存在は殺伐とした対決展開に潤いを与え、女性読者の共感をも呼び込む架け橋となった。彼女が文化部のデスクで淹れるお茶の描写一つをとっても、作品全体に漂う豊かさと品格を支えていたことは疑いようがない。