テレビの普及とともに、加藤治子さんの魅力は全国のお茶の間へと浸透していった。なかでも脚本家・向田邦子との出会いは、彼女のキャリアにおける最大の転機となる。NHK総合テレビをはじめとする各局で放送されたドラマ群において、彼女は日本の家族像を象徴する存在となっていった。
伝説的なドラマ『寺内貫太郎一家』では、頑固親父を優しく包み込みつつも芯の強さを見せる母親役を好演。日本のホームドラマというジャンルを黄金期へと導く立役者となった。さらに『阿修羅のごとく』で見せた四姉妹の長女役では、穏やかな日常の裏に隠された女性特有の業や葛藤を見事に表現。品格の中にふと覗かせるリアルな感情の揺れは、向田ドラマの真骨頂であり、加藤治子という女優の深みを決定づけた。