多くの生活者が抱きがちな環境認識に「木を切るのは環境破壊であり、自然は人の手を加えずそのままにしておくのが一番良い」という言説があります。しかし、この論理は人工林においては完全に破綻しています。
人工林は、人間が木材を利用する目的で自然の植生を人為的に改変して作り上げた「半自然の生産基盤」です。人の手でスタートさせたシステムである以上、人の手によるメンテナンスを途中で放棄すれば、生態系の自律的な回復に向かうのではなく、林床の砂漠化、土砂崩落、花粉の大量飛散という環境負荷の連鎖へと転落します。
今後求められる人工林保全の判断基準と方向性は、以下の明確な区分けにあります。
- 林業適地(傾斜が緩やかで道が近い山林):高性能林業機械を導入して徹底的に低コスト化し、主伐と再造林を素早く回す「高効率な産業林」として集約管理する。
- 林業不適地(急傾斜地や奥地の山林):木材生産を目的とせず、スギを間伐した隙間に広葉樹を植え、長い年月をかけて自然に近い「針広混交林」や「天然生林」へと誘導・転換させる。
- 山林所有者の心構え:管理不能になった山林は放置せず、自治体の「森林経営管理制度」を活用して市町村や意欲ある林業経営体に経営管理権を集積・委託する。
「木を一切切らないことがエコ」という一面的なドグマから脱却し、必要な伐採と利用を肯定したうえで、経済林と環境保全林を科学的にゾーニング(区分)することこそが、2026年以降の日本に求められる現実的な森林共生モデルです。