なぜ衣類についたサビは、普段の洗濯や強力な漂白剤を使っても落とせないのでしょうか。その答えは「汚れの化学構造」にあります。
通常の食べこぼしや皮脂は有機物ですが、サビは鉄が酸化して生じた「無機物の金属酸化物(酸化鉄)」です。洗濯洗剤に含まれる界面活性剤は油分を包み込んで引き離す働きを持ちますが、繊維の奥深くに強固に結合した金属酸化物を分解する力はありません。
ここで多くの人が陥りがちな罠が、酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)や塩素系漂白剤の使用です。オキシクリーンでサビが落ちない理由は、これらが汚れから電子を奪って分解する「酸化剤」だからです。サビ自体がすでに酸化された状態であるため、酸化系の漂白剤を投入しても効果がないばかりか、塩素系漂白剤はサビに逆効果をもたらし、化学反応によって鉄分をさらに酸化・変色させ、シミをより濃く定着させてしまう危険性があります。
大手化学メーカー・花王の公式サポート窓口が長年アナウンスしている通り、鉄サビを除去するには酸化の逆反応である「還元反応」を起こすか、酸の力で金属イオンを水溶性に変化させて溶かし出す「キレート作用」を利用する必要があります。