ここ数年、X(旧Twitter)や地域限定の掲示板などを中心に「大手筋の老舗が次々と閉まっている」「大手資本のチェーンばかりになって風情が失われるのでは」という悲観的な声が散見されました。一時期、大手筋商店街のテナント閉店理由をめぐって「家賃高騰による個人店の撤退か」「商店街自体の地盤沈下か」といった憶測が飛び交ったのも事実です。
しかし、商店街振興組合への取材データや登記情報、現地への定点観測から見えてきた現実は、ネット上の噂とは180度異なる構造変化でした。連続する閉店の主たる要因は、主に以下の2点に集約されます。
第一に、昭和中期から平成初期に建築された複合ビルの耐震化・老朽化対策に伴う計画的一斉建て替えです。防災基準の引き上げに伴い、既存不適格ビルの建て直しや大規模リノベーションが集中的に実施され、その工事期間中に複数テナントが一時移転や勇退を選択した時期が重なりました。これが外部からは「一斉閉店」と映り、過度な不安を生む引き金となったのです。
第二に、老舗店主の世代交代と事業承継のタイミングです。長年暖簾を守り続けてきた店主の高齢化に伴い、跡継ぎ問題と向き合った結果としての閉店です。特筆すべきは、撤退した区画が長期間放置されることなく、公募直後に新たな事業主によって埋まっている点です。空き区画が埋まらず虫食い状に廃れていく「シャッター街現象」とは本質的に異なり、新陳代謝が健全に機能している証拠といえます。