刑事裁判の法廷や接見室で語られる被告人たちの肉声を聞くと、無免許運転に手を染める動機は驚くほど短絡的であり、そこには特有の認知の歪み(バイアス)が存在します。
法廷で証言台に立ったある被告人は、「地方で暮らしており、車がないとスーパーへの買い物も通勤もできない。免許停止の処分を受けたが、近所を少し走るくらいなら警察に見つかるはずがないと思い込んでいた」と涙ながらに語りました。この発言に象徴されるのが、社会心理学でいう「正常性バイアス(自分だけは大丈夫だという過信)」と「移動依存の構造」です。特に公共交通網が脆弱な地域社会では、自動車の運転が生活の絶対条件となっており、免許を失った瞬間に自身の生活基盤が失われる恐怖から、法を犯してでもキーを回してしまう現実があります。
さらに深刻なのは、「成功体験の積み重ねによる規範意識の崩壊」です。免許失効中や免停中に一度運転して何事も起きなかった経験が、「次もバレない」「捕まるのは運が悪い奴だけだ」という歪んだ学習を促します。しかし、現在の警察車両には自動ナンバー読取装置や車載端末が配備され、不審な挙動を見せる車両は瞬時に照会されます。法を軽視する小さな一歩が、やがて取り返しのつかない大事故や現行犯逮捕という決定的な破滅へと直結しているのです。