本作のクリエイティブを牽引するキーパーソンとして名前が挙がっているのが、世界的評価を受ける映画監督・是枝裕和だ。これまで現代社会の家族や周縁に生きる人々を鋭く見つめてきた名匠が、本作『浪漫亭』で挑むのは、華やかさと退廃が同居する大正浪漫の黄昏期である。
単なるレトロ趣味の再現にとどまらない。貧困、格差、思想の激動といった暗部を容赦なく照らし出し、そこに生きる人々の呼吸を丁寧なヒューマンドラマとして昇華させる手腕は圧巻の一言に尽きる。美術セットや衣装に至るまで徹底した時代考証が施され、当時の空気感そのものをフィルムに焼き付ける試みが進められている。