行政や猟友会が懸命な捕獲活動を続けているにもかかわらず、なぜキョンの数を減らすことができないのでしょうか。取材と生態調査から見えてきた理由は大きく3つ存在します。
1. 圧倒的な繁殖スピードと成熟の早さ
キョンは生後約半年から1年未満で性成熟を迎えます。さらに一般的なニホンジカと異なり、明確な繁殖期を持たず1年中いつでも妊娠・出産が可能です。妊娠期間は約7か月と短く、出産直後に再び受胎できるため、メス1頭が年間を通して増殖し続ける驚異的な繁殖力を誇ります。
2. 日本の野山における「天敵」の完全な不在
原産地である中国南部ではトラやヒョウ、ドールなどの肉食獣が捕食者として機能していますが、現在の日本国内にはキョンを捕食する大型肉食動物(キョンの天敵)が存在しません。野犬やキツネが幼獣を襲うケースはあるものの、個体群全体を抑制する圧力には程遠いのが実情です。
3. 捕獲を困難にする小柄な体躯と警戒心
キョンは体高約40cm、体重10〜15kg前後と小型で、背丈の低い笹藪や密林を自在に移動します。大型シカ用の罠では作動しにくく、姿を隠すのが巧みなため銃猟の射線を通すことが極めて難しいという現場の課題があります。