「虚心坦懐」の正しい読み方は「きょしんたんかい」です。日常会話というよりは、公式なスピーチや重要な商談、論説文などで重用される格調高い語彙として位置付けられています。
この四字熟語は、前後の2語に分解することでその意味が明確に立ち現れます。
「虚心(きょしん)」とは、心の中に何のわだかまりも私心もない状態、すなわち「心を空(から)にして先入観を持たないこと」を指します。一方の「坦懐(たんかい)」の「坦」は平らであることを意味し、「懐」は胸の内や心境を指すため、「広く平らかで、包み隠しのない心」を意味します。この二つが組み合わさることで、「心に偏見やわだかまりがなく、広く開かれた平穏な気持ちで事態を受け入れる」という極めて能動的な精神的境地を表す言葉となりました。
語源の系譜を辿ると、中国の古代思想に行き着きます。「虚心」の概念は『老子』第16章にある「虚を致すこと極まり、静を守ること篤し」という無為自然の境地に端を発し、白紙の状態で世界の理(ことわり)を観照する姿勢として説かれました。また「坦懐」は唐代に編纂された正史『晋書』などの歴史書において、度量が広く公明正大な人物の気質を称える表現として定着しました。つまり、単にボーッとしている状態ではなく、研ぎ澄まされた受容力を保つ成熟した人格の証として用いられてきた歴史的背景が存在します。