体験の質を左右する最大のカギは、潮の満ち引きである。一般的に知られるマングローブカヤックツアーだが、実は潮位によって観察できる景色も体験の質も180度変化する。
満潮時の魅力は、なんといっても水面が高くなることだ。通常は立ち入れない浅瀬や、木々の枝が低く垂れ下がる「緑のトンネル」の奧深くまでカヤックで進入できる。まるで水上を散歩しているかのような浮遊感と、木漏れ日を浴びる圧倒的な没入感が味わえるのは満潮前後2時間に限られる。
対して干潮時は、まったく別の顔を見せる。水位が下がると広大な干潟が現れ、タコノアシガニやミナミトビハゼといったユニークな生き物たちが一斉に泥の上で動き出す。パドルを置き、干潟に降り立って生態系をじっくり観察できるのはこのタイミングだ。静けさと浮遊感を味わいたいなら満潮、生き物との出会いや知覚的な発見を求めるなら干潮狙い――目的に応じた時間選びこそが、ツアー成功の秘密なのだ。