川島なお美さんの闘病を振り返る際、最も多い誤解が「医療を完全に拒絶して民間療法のみに頼った」という言説です。しかし、実際の時系列と医療記録を追うと、彼女は決して近代医療そのものを頭ごなしに否定していたわけではありません。
事の発端は2013年8月、人間ドックの腹部超音波検査で肝臓に小さな影が見つかったことでした。精密検査の結果、診断された病名は「肝内胆管がん」。肝臓内の胆管に発生する悪性腫瘍で、自覚症状が出にくく、早期発見が極めて困難とされる難治性がんの一つです。発見時、腫瘍は比較的小さいサイズであったものの、医師からは早期の手術を強く勧められました。
しかし、当時すでに決定していた舞台の降板を避けるため、川島さんは即座の手術を躊躇します。複数の医療機関でセカンドオピニオンを重ね、最終的に決断を下したのは発見から数カ月後のことでした。2014年1月28日、東京都内の大学病院において、12時間にも及ぶ「腹腔鏡下肝部分切除術」を受けています。手術は無事に成功し、患部は完全に切除されました。
つまり、川島さんは「手術という標準治療」は受け入れていたのです。世間が認識している「治療拒否」の真実とは、手術そのものではなく、術後に医師から強く推奨された「再発予防のための抗がん剤治療(術後補助化学療法)の拒否」を指しています。