「昔は食物アレルギーの子どもなんて一人もいなかった」という言説の半分は、当時の社会的背景による「認知度と診断精度の低さ」に起因しています。
昭和30〜50年代、アレルギーという概念そのものが教育現場や一般家庭に十分に浸透していませんでした。給食を食べた後に体調を崩しても、「お腹が弱い子」「自家中毒」「好き嫌いによるわがまま」「虚弱体質」などと片付けられていたケースが頻発していたのです。当時は特異的IgE抗体を測定する血液検査の精度も未発達で、明確な診断基準が存在しなかったため、統計として表面化していなかったという暗部があります。
しかし、もう半分は紛れもない現実です。厚生労働省や文部科学省が実施してきた歴代の学校生活管理指導表の調査データを追うと、アレルギー疾患を持つ子どもの割合は年々右肩上がりを続けています。文部科学省の全国調査によれば、公立小中高校における食物アレルギーを持つ児童生徒の割合は、2004年の調査開始時から2020年代にかけて倍増以上に拡大しました。「昔より格段に増えている」という体感は、決して気のせいではなく確たる現実です。