華やかなステージの上で涼しい笑みを浮かべるアシスタントですが、その舞台裏は「アクロバット選手並みの肉体労働」そのものです。一般の観客はマジシャンの手の動きや大掛かりな刃物に目を奪われがちですが、切断マジックの成否の8割はアシスタントの技量にかかっています。
海外のプロイリュージョニストのカンパニーに所属していた日本人女性パフォーマーの証言手記やインタビュー記録によると、現場の現実は極めてシビアです。
「箱に入った瞬間から、暗闇の中で激しいカウントダウンが始まります。観客から見ればただ横たわっているように見えても、内部では膝を限界まで顎に引き寄せ、背骨を極限まで曲げた状態で数十秒間、呼吸を浅く整えて静止し続けなければなりません。わずか数センチでも足の引き込みが甘ければ、差し込まれる金属ブレードに身体が触れて大事故につながる。恐怖心に打ち勝ち、暗闇で心拍数をコントロールするメンタルトレーニングが毎日の日課でした」
SNSやネット掲示板などでは、「マジックのアシスタントはただ容姿が整ったモデルが務めているだけではないのか」といった見方も散見されます。しかし実際のオーディションでは、身長150cm〜158cm前後、体重45kg以下といった厳しい体格基準に加え、新体操やバレエ、コントーション(軟体芸)のバックグラウンドを持つプロのパフォーマーが厳選されているのが業界の実態です。