なぜこのような常軌を逸したキャラクター描写が、日曜夕方のファミリー向けアニメで長年放映され続けているのでしょうか。その核心には、半世紀以上にわたりサザエさんの脚本を支えてきた重鎮・脚本家雪室俊一氏の存在があります。
実は、堀川くんというキャラクターは長谷川町子の原作漫画には一切登場しないアニメ完全オリジナルキャラクターです。雪室氏が担当する回において、堀川くんのキャラクター造形は先鋭化していきました。
かつてのアニメ関係者インタビューや業界内の記録において、雪室氏は「堀川くんを決して異常者として描いているわけではない」という趣旨を明かしています。氏の視点における堀川くんは、「大人の常識や社会通念に縛られず、自分の興味に対してどこまでも純粋でまっすぐな少年」なのです。
子どもが偶然見つけた壁のシミに愛着を持ったり、好きな女の子の名前を飼っている生き物に付けたりする行為は、児童心理の観点から見れば「あり得ないファンタジー」ではありません。しかし、それを実直かつ淡々と映像化することで、大人の視聴者側には「強烈な不気味の谷(Uncanny Valley)」が生じ、結果として「狂気」「サイコパス」という受容のされ方を生み出しました。